AGA治療に新たな地平?理研が発表した最新の毛髪再生治療とは

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[記事公開日]2018/06/14
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理研が発表した最新の毛髪再生治療とは

試験管の中で芽吹く命

2018年6月4日、薄毛に悩む人たちは、非常に衝撃的なニュースを耳にしたのではないでしょうか?この数年以内に、毛髪再生医療は革命的な変化を遂げる可能性が出てきました。

以下、理研と医療ベンチャーのオーガンテクノロジーズが発表した最新の毛髪再生医療にクローズアップします。

ヒトの毛包を体外で培養することに成功

2018年6月4日、理化学研究所の辻孝チームリーダーらは、毛髪再生医療における新たなステージを示唆する発表を行ないました。毛包を体外で培養し、増殖させる、という最新かつ画期的な技術開発の発表です。

●毛包とは?

毛包とは、毛を製造するための工場のような組織。この組織の一部に不具合が生じると、AGAを始めとした抜け毛・薄毛が進行します。あるいは、何らかの理由で毛包が消滅してしまうと、一生涯、その部位から毛が生まれることはありません。

理研の研究グループは、この大事な毛包それ自体を体外で培養し、増殖させることに成功。過去、マウスの毛包の培養には成功していましたが、今回はヒトの毛包の培養に成功しています。

2020年には実用化を目指す

2018年7月より、理研は、増殖させたヒトの毛包を使った動物実験を予定。これにより安全性と有効性が確認されたならば、次に、ヒトによる臨床試験に入ります。ヒトの臨床試験においても安全性・有効性が確認された場合、2020年を目途に、医療現場での実用化へと入る構想です。

●従来のAGA治療法との根本的な違い

AGAを始めとした薄毛外来の現場では、かねてより様々な治療法が採用されています。すでに内服薬や外用薬を使用し、治療を進めている人もいることでしょう。あるいは、メソセラピーなどの施術を受けたことがある人もいるかも知れません。

今回、理研が発表した毛髪再生技術は、これら従来の治療法とは全く発想が異なるもの。ここで両者の違いを明確にしておきましょう。

なお、以下では薄毛の症状として最も一般的なAGA(男性型脱毛症)の治療を前提に開設します。

従来のAGA治療とは?

従来のAGA治療には、大きく分けると「内服薬・外用薬」「施術系治療」「外科手術」の3種類があります。

●内服薬・外用薬(フィナステリド・ミノキシジル)

日本皮膚科学会も推奨する最も一般的なAGA治療法が、内服薬と外用薬を使ったもの。具体的には、フィナステリドという成分を含む内服薬(プロペシアなど)、およびミノキシジルという成分を含む外用薬(リアップ)の投与です。これら薬剤の臨床試験では、患者の大半において、頭髪に何らかの変化が確認されています。

●施術系治療(育毛メソセラピー・HARG療法)

毛髪の再生に有効な薬剤を、注射器などを使って頭皮に直接注入する治療法。育毛メソセラピーにおいては、フィナステリド・ミノキシジル・毛髪成長因子(グロースファクター)を中心とした薬剤を使用し、HARG療法においては幹細胞を中心とした薬剤を使用します。

●外科手術(自毛植毛)

内服薬や外用薬、施術系治療で髪が再生しないほど症状が悪化した患者においては、自毛植毛と呼ばれる外科手術の選択が可能です。

自毛植毛とは、後頭部や側頭部に残存している毛包組織を生きたまま採取し、これを薄毛部分に移植するというもの。移植後に毛包が生着すれば、移植部位においてのみ髪が再生します。

従来のAGA治療には様々な問題点があった

従来の治療法でも、十分に毛髪を再生させた患者は多くいます。その一方で、いかにしても避けられない大きな問題点もありました。

●内服薬・外用薬の問題点

内服薬・外用薬を使用した治療の場合、効果の発現レベルや効果が発現するまでの期間に、著しい個人差があります。体質の違いによっては、何ら効果を実感できない患者も少なくありません。

加えて、薬の使用を中断した場合、再びAGAの進行が始まります。仮に薬で毛髪が再生したとしても、これを維持するためには一生涯、薬を使用し続けなければならない、ということです。費用の問題で治療を中止する患者もいることでしょう。

●施術系治療の問題点

内服薬・外用薬による治療に比べると、施術系治療のほうが効果的であることは確かです。しかしながら、満足できる状態まで髪を回復させたい場合、患者によっては、数百万円規模の莫大な費用がかかると想定されます。 加えて、治療の効果を維持するためには、治療後における半永久的な内服薬・外用薬の使用が推奨されています。

●自毛植毛の問題点

施術系治療を遥かにしのぐほどの、極めて高額な治療費がかかります。

また、患者本人の側頭部や後頭部から毛包を採取するという治療の性質上、毛包の移植数にはおのずから限界が生じます。よって、満足できる状態までは髪を再生できない可能性もあるでしょう。

理研の発想が従来の治療法の問題点を克服する?

従来のAGA治療の問題点を大きく分けると、「治療効果」と「治療費」の2つ。理研が進めている研究は、これら2つの問題点を克服する可能性があります。

●治療効果の問題を克服する?

AGAの原因は、何らかの理由による毛包組織の異常。あるいは毛包組織の消滅です。

理研は今回、正常な毛包を人工的に増殖させることに成功しました。これを頭皮に移植すれば、理論上、必ず髪が生えてきます。AGAに限らず、様々なタイプの薄毛を克服することができるようになるでしょう。

「薄毛治療には個人差がある」という、従来からの常識を覆す可能性があります。

●治療費の問題を克服する?

培養技術と移植技術が発展し、かつ安定化すれば、現在の自毛植毛等に比べて治療費が格段に安くなる可能性があります。

現状、AGA治療が保険診療になる見通しは薄く、かつ技術の安定化にも時間がかかりそうですが、将来的には、多くの人が気軽に受けられる治療となる可能性はあるでしょう。

AGAを含む薄毛全般が治療対象になる

繰り返しますが、毛包組織に何らかの異常が生じた場合、抜け毛や薄毛が進行します。また、毛包組織が消滅した場合には、自毛植毛を受けない限り、永久に髪は生えてきません。

理研が現在進めている研究は、毛包そのものを人為的に増やす、というもの。よって、治らない脱毛症はない、とも言えます。

理研が構想している薄毛治療への活用順序

もし今回の技術が成功裏に開発された場合、理研では、まずAGA患者を対象とした治療をスタートさせるとの構想を持っています。AGA患者において一定の治療効果を確認したのちに、FAGA(女性男性型脱毛症)や先天性脱毛症などの治療への活用を考えていく、という順序です。

AGA患者の想定人数は全国に1800万人ほど。他の種類の脱毛症に比べて症例数が圧倒的に多く、かつ治療ニーズも非常に高い脱毛症がAGAです。よって、AGA治療からスタートさせるという理研の構想は妥当なものと言えるでしょう。

AGA治療のあり方が大きく変わる可能性

従来からあるAGAの治療法には、メリットがある反面、上で説明したような大きな問題点があることも事実です。しかしながら、理研が現在進めている研究の成果次第では、これら問題点を克服する新たなAGA治療が誕生する可能性があります。

医療現場での実用化の目途は2020年。理研の研究成果に期待して待ちましょう。

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