5α還元酵素Ⅰ型

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[記事公開日]2018/03/22
[最終更新日]2018/06/18
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5α還元酵素Ⅰ型とは

5α還元酵素Ⅰ型とは、男性ホルモンのテストステロンを、より働きが強力なジヒドロテストステロンに変質させる物質である。皮膚の内部の皮脂腺に多く存在し、皮脂の分泌量に大きく関与している。5α還元酵素には、Ⅰ型の他にもⅡ型が存在し、AGA(男性型脱毛症)の発症原因はⅡ型であるとされてきた。ところが昨今の研究により、Ⅰ型が関与するAGAも存在することが示唆され、これに基づいてⅠ型・Ⅱ型の両方の酵素を抑制するAGA治療薬「ザガーロ」が発売された。

ジヒドロテストステロンを生成する酵素

5α還元酵素Ⅰ型は全身の、主に皮膚の内部の皮脂腺で多く分泌されている物質。男性ホルモンのテストステロンに影響を与え、より作用が強力な男性ホルモンであるジヒドロテストステロンを生成する働きがある。

呼び方には、他にも5αリダクターゼⅠ型、5αレダクターゼⅠ型などいくつかあるが、正式には「3-オキソ-5α-ステロイド-4-デヒドロゲナーゼ1」と言う。

「Ⅰ型」と呼ぶことから推測できる通り、「Ⅱ型」の5α還元酵素も存在する。

5α還元酵素Ⅰ型の本来の役割は、皮膚の表面などの保護・保湿である。[注1]

人間の皮膚や毛髪を健康的に維持するためには、その表面におけるバリア機能を万全に機能させなければならない。このバリア機能を維持させるためには、常に、皮膚表面に一定の皮脂が分泌されている必要がある。5α還元酵素Ⅰ型は、全身の皮脂腺から皮脂を分泌させる際に重要な役割を果たす。

ただし、5α還元酵素Ⅰ型の分泌量には個人差がある。分泌量が多い者は、脂性肌(脂っぽい肌)になってしまうことがある。逆に分泌量が少ない者は、乾燥肌になってしまうことがある。

過去の研究によると、これら分泌量の多少は、遺伝によって決まると考えられている。[注2]

なお、5α還元酵素Ⅰ型が多量に分泌されることで、皮脂によって毛穴が詰まった場合、毛髪の成長に影響を与えることがある。皮脂の詰まりが著しく、かつ長期にわたった場合は、抜け毛・薄毛が発症することもある。

「Ⅰ型」と「Ⅱ型」は大きく違う

5α還元酵素Ⅰ型を理解するうえで、同Ⅱ型との違いを明らかにしておく必要がある。

【Ⅰ型とⅡ型との違い】

Ⅰ型

上述の通り、Ⅰ型が多存在している場所は、皮膚内部の皮脂腺である。皮脂の分泌量に大きく関与している。

Ⅰ型は頭部にも多く存在しているが、その大半は後頭部と側頭部に分布している。

Ⅱ型

Ⅱ型が多く存在している場所は、毛乳頭である。毛乳頭とは、1本1本の毛の根元に存在する組織で、毛の成長に重要な枠割を果たしている。

Ⅱ型は頭部にも多く存在しているが、その大半は前頭部と頭頂部に分布している。

Ⅰ型・Ⅱ型と薄毛との関連

Ⅰ型・Ⅱ型を問わず、5α還元酵素は男性ホルモンのテストステロンを、より強力なジヒドロテストステロンに変質させることができる物質。ジヒドロテストステロンが、毛乳頭に存在する男性ホルモン受容体と結合すると、ヘアサイクルが乱れて抜け毛・薄毛を発症可能性を高める。

ただし、ここで再確認されたいことは、Ⅰ型・Ⅱ型、それぞれが多く分布している場所である。Ⅰ型は全身の皮脂腺、後頭部、側頭部に多く存在していることに対し、Ⅱ型は前頭部や頭頂部に多く存在している。

薄毛、特にAGA(男性型脱毛症)は、多くの場合、前頭部や頭頂部に発症する。AGAやED(勃起不全)の治療で知られるイースト駅前クリニックの公式サイトでは、この点について次のように結論付けている。

この型(Ⅱ型)の分泌が多いとされる前頭部や頭頂部でのAGAの進行が進んでいる場合は、5αリダクターゼⅡ型の影響を受けている可能性が高いといえます。[注3]

この説明のように、現在の医学会においては、AGAの原因の大半が5α還元酵素Ⅱ型の働きである、と結論付けられている。

【Ⅰ型が薄毛に関与しているケース】

上記の文脈から、AGA治療薬として、5α還元酵素Ⅱ型を抑制する成分「フィナステリド」の研究・開発が進められた。その結果で誕生した内服薬が、かの著名な「プロペシア」である。

プロペシアの発毛効果については、ネット上では賛否があるものの、臨床試験でのデータを見るに疑いの余地はない。効果の程度や、効果の発現までの期間に個人差はあるものの、長期的な薬の服用により、90%以上の患者の頭髪に何らかの変化が確認されている。

しかしながら、中には「プロペシア」を服用してもAGAがまったく改善しないケースがある。場合によっては、薄毛が進行してしまうケースすらある。

これら例外的なAGAの発症原因について、Ⅰ型が関与しているのではないか、との推論が成り立った。かくして、Ⅰ型Ⅱ型の両還元酵素の働きを抑える成分「デュタステリド」の研究・開発が進められた。その結果で誕生した内服薬が、「ザガーロ」である。

「プロペシア」でAGAが改善されない患者が、内服薬を「ザガーロ」に変更するとAGAが改善していくケースが見られる。これにより「AGAの原因の大半はⅡ型であるものの、患者によってはⅠ型が関与していることもある」という結論となった。

なお「ザガーロ」は、2015年9月に厚生労働省から認可を受け、2016年6月から多くのクリニックで処方されている。

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