ノコギリヤシ

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[最終更新日]2018/04/03
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ノコギリヤシとは

ノコギリヤシとは、南北アメリカ大陸に自生している植物の一種。抽出されたエキスがAGAの改善に効果的として、国内外で広く注目されている。ノコギリヤシのAGA改善効果については、実際には国内の研究者の間でも賛否両論。日本皮膚科学会では、ノコギリヤシのAGA改善効果について触れていない。一方、海外からはAGA改善が見られたとする臨床結果も複数報告されている。

ノコギリヤシにAGA改善効果が期待されている

昨今、ノコギリヤシから抽出された成分がAGAの改善に有効であるとされ、話題である。実際、育毛サプリメントや育毛シャンプーの中にも、ノコギリヤシを主要成分として迎えている商品も多数ある。

現在、ノコギリヤシからの抽出成分がAGAに改善効果をもたらす、という趣旨の研究論文は、比較的多く確認できる。その一方で、同抽出液のAGA改善における効果に懐疑的である医師・研究者も多数いる。日本皮膚科学会発表の「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」[注1]には、AGA改善に有効とされる成分・治療法の一覧が掲出されているが、それら一覧の中にノコギリヤシは見当たらない。

賛否分かれるノコギリヤシの効能だが、著名なAGAドクターの中には、その効能に肯定的な立場をとる者もいる。これまで数々のAGA症例にあたってきた実力派ドクター、AGAヘアクリニックの水島郷太院長もその一人である。以下、水島医師のコメントより。

ノコギリヤシの成分には「5αリダクターゼ」という酵素の、発生を抑制する効果があるといわれています。5αリダクターゼは男性ホルモンの一種である「テストステロン」と結合すると「DHT(ジヒドロテストステロン)」と呼ばれる物質に変化する特性を持っています。DHTは頭髪の発毛サイクルに影響を及ぼして抜け毛を引き起こす原因と考えられているため、5αリダクターゼを抑制するということは、AGAの進行を食い止める効果に期待が持てるといえるのです。[注2]

あるいは、東京新宿のTMクリニック院長・岡田里佳医師(日本皮膚科学会専門医・日本内科学会認定医)もまた、ノコギリヤシの効能について肯定的である。

ノコギリヤシを一定期間飲んでAGAや前立腺肥大症が改善したという研究結果も複数報告されています。このような研究結果から国によってはノコギリヤシを配合したものを医薬品として認可しているところもありますが、日本では医薬品としては認可されておらず、サプリメントとして販売されています。一方、本邦のガイドラインや海外での大規模な分析では、前立腺肥大症に対する効果は否定されています。しかし、ここで示したように、有効性を評価している報告も多数あるため、人によってはある程度の効果が期待できる可能性があると考えます。[注3]

AGA治療の現場で数々の症例を手掛けてきた医師たちが、ノコギリヤシの効能について必ずしも否定的ではない点は、極めて興味深い。

ノコギリヤシにおけるAGA臨床試験

ノコギリヤシによるAGA改善効果を検証すべく、海外ではいくつかの臨床試験が行われている。

【米国における臨床試験】

AGAを発症している23~64歳の男性10人に対し、ノコギリヤシを処方。結果、10人中6人にAGA改善効果が確認できた。[注4]

【タイにおける臨床試験】

20~50歳の男性にノコギリヤシを処方。服用前に比べ、服用12週間後、服用24周回後、それぞれで毛髪数の増加が確認できた。[注5]

【イタリアにおける臨床試験】

AGAを発症している男性100人を対象に、フィナステリド1mgを服用するグループと、ノコギリヤシエキス320mgを服用するグループとに分け、それぞれ毎日、24週間にわたり服用(フィナステリドとはAGA治療薬の筆頭『プロペシア』の主要成分であり、日本でも認可されているAGA治療薬である)。結果、前者のグループのAGA改善率は68%、後者のグループのAGA改善率は38%であった。[注5]

AGA発症の真犯人は5αリダクターゼという物質

AGAは、男性ホルモンの一種であるDHT(ジヒドロテストステロン)という物質が原因となって発症する。DHTとは、男性ホルモンであるテストステロンが変質した物質である。DHTが毛乳頭細胞の男性ホルモン受容体と結びついたとき、ヘアサイクルの乱れが生じ抜け毛・薄毛へと至る。

このプロセスを逆から考えると、テストステロンがDHTに変質しない限り、AGAは発症しない。テストステロンをDHTに変える物質は、5αリダクターゼという酵素である。

ノコギリヤシには5αリダクターゼの活動を抑える働きがある

上記発想に基づいて生まれたAGA治療薬が、他でもない、世界で最も著名なAGA治療薬である「プロペシア」である。「プロペシア」の主要成分はフィナステリド。5αリダクターゼの活動を阻害する成分として知られる。

他にも、デュタステリドという成分を配合するAGA治療薬も存在するが、この成分も同じく5αリダクターゼの活動を阻害する。

ノコギリヤシにAGA改善効果があるとされる根拠は、ノコギリヤシが、これらフィナステリドやデュタステリドと同じく5αリダクターゼの活動を阻害するから、というものである。

本当にノコギリヤシには5αリダクターゼを阻害する働きがあるのか?

AGA改善効果が注目される随分前から、ノコギリヤシには前立腺肥大症を緩和する働きがあるとされ、海外では多くの研究がなされてきた。

前立腺肥大症とは、加齢とともに前立腺が肥大して尿道を圧迫。頻尿や排尿力の低下などの症状を引き起こす病気のことである。

前立腺が肥大する原因に大きく関与している物質が、前出のDHT。前立腺周辺にも5αリダクターゼが多く存在するため、周辺にはDHTが生まれやすい。よってAGAの治療と同様に、5αリダクターゼの活動を抑える治療を行なえば前立腺肥大症の症状は緩和する。

現在、前立腺肥大症の治療薬には、AGA治療薬と同じフィナステリドやデュタステリドが採用されている。

繰り返すが、AGA改善効果が注目される以前から、ノコギリヤシは前立腺肥大症の緩和効果が注目されていた。そもそも、プロペシアなどの主成分となるフィナステリドは、ノコギリヤシの抽出液を化学合成したものである。ノコギリヤシが前立腺肥大にもAGAにも全く作用がない、と考えることが難しい。

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