TGF-β1

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[記事公開日]2018/06/18
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TGF-β1とは

TGFとは、厳密にはトランスフォーミング増殖因子と言い、人の細胞分裂をコントロールする際に重要な役割を果たしている物質である。必要に応じ、体内で自然生成される。大別してTGFにはα型とβ型の2種類があり、β型のうち「β1」と呼ばれるものはAGAの発症に深く関与している。一方で、TGF-β1は初期の癌細胞の増殖を防ぐなど、体内では有用な役割を果たしている側面もある。

TGF-β1が脱毛を湯発するメカニズム

AGAの発症メカニズムに詳しい人でも、TGF-β1という名を聞いたことがない可能性があろう。
一般にAGAの発症プロセスにおいて登場する物質は、テストステロン、5αリダクターゼ、DHTの3種類である。加えて、アンドロゲンレセプター(男性ホルモン受容体)という言葉を聞いたことがある人もいるかも知れない。
しかしながら、知名度は低いもののTGF-β1もまた、これら一連のAGA発症プロセスにおいて深く関与している物質。改めてAGA発症の流れを確認しながら、TGF-β1が、どの場面において、どのような働きをしているのかを詳しく確認したい。

AGA発症のプロセスとTGF-β1が登場する場面

俗に、男性ホルモンの量が多い人はAGAを発症しやすいと言われているが、この考え方は、大雑把な解釈においては当たらずも遠からずである。
AGAの発症の元凶となっている物質は、男性ホルモンの一種であるテストステロン。このテストステロンが体内を巡る過程で、5αリダクターゼという酵素と結びつき、AGAの発症原因とされるDHTという物質に変化する。
DHTは、毛髪の根元に存在するアンドロゲンレセプターと結び付き、毛髪の成長を司る司令塔である毛乳頭細胞の働きを乱す。これにより毛髪の成長が妨げられ、抜け毛の増量から薄毛の進行へと至る。

この一連のAGA発症プロセスにおいてTGF-β1が登場するのは、DHTがアンドロゲンレセプターと結び付く時である。両者が結び付いた際に毛乳頭細胞の働きが乱れる、と説明したが、この乱れを生む橋渡しとなっている物質がTGF-β1である。

TGF-β1は、DHTがアンドロゲンレセプターと結び付くことによって生成される物質。このTGF-β1が増殖すると、その増殖情報は脱毛指令因子であるFGF-5に伝えられる。これによりFGF-5は毛乳頭細胞に「毛周期を乱れさせよ」という指令を下し、結果、薄毛に至るというメカニズムである。
つまり、「DHTが毛乳頭細胞の働きを乱す」という小さなプロセスの中には、TGF-β1とFGF-5という2つの物質が存在している、ということである。

TGF-β1の働きにより毛周期が乱れる

TGF-β1の増殖は、直積的に抜け毛の指令に関与する訳ではない。厳密に言えば、TGF-β1は、毛周期の短縮を指令する存在である。

毛周期とは

1本の毛髪は、1つの毛穴から半永久的に生え続けるものではない。成長しては抜け、また成長しては抜け、といった生まれ変わりのサイクルを持つ。このサイクルのことを毛周期(ヘアサイクル)と言う。
一般にヘアサイクルの周期は3~6年程度。毛が成長し続ける「成長期」という期間が2~6年、毛の成長が止まる「退行期」という期間が2週間ほど、次なる毛が生れる準備段階である「休止期」という期間が約3~4ヶ月続く。これらを合わせて、毛周期と言う[注1]

TGF-β1が毛周期を短縮させる

一般に3~6年で1サイクルを終える頭髪だが、TGF-β1が働きかけることにより、1サイクルが数ヶ月~1年ほどに短縮されてしまう。その結果、髪が生き生きと生え続ける「成長期」の期間は必然的に短くなる。すなわち、「成長期」が始まったばかりの弱い毛が早々に「休止期」を迎えてしまう状態が、AGAということである。
なお、この理屈を逆から考えれば、TGF-β1の抑制に成功すれば毛周期は再び長くなる。すなわち、AGAが改善する。

TGF-β1には初期癌の抑制などの有用な側面もある

TGF-β1の具体的な働きは、細胞の増殖を抑えるということである。毛乳頭でTGF-β1が生れることにより、毛髪の原料となる毛母細胞の増殖が抑えられることから、薄毛が進行していく。
このようにTGF-β1は、AGA患者にとっては非常に厄介な存在ではあるが、片や、体内では癌細胞の増殖も抑えるという重要な役割も持つ。特に初期の癌細胞の増殖を防ぐ上においては、非常に大事な働きをする物質として知られている。

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