5α還元酵素Ⅱ型

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[最終更新日]2018/04/24
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5α還元酵素Ⅱ型とは

5α還元酵素Ⅱ型とは、AGAを発症させる最大の要因となる物質。男性ホルモンのテストステロンに働きかけ、AGAの原因物質であるDHTを生産する働きがある。5α還元酵素の働きを阻害すればDHTの生産量が減るため、AGAの改善、もしくは進行の抑制効果が期待できる。この発想に基づいて作られたAGA治療薬が「プロペシア」である。

AGAの原因物質となるDHTを生成する酵素

5α還元酵素Ⅱ型は主に前頭部や頭頂部の毛乳頭に多く存在している酸化還元酵素の一種である。男性ホルモンのテストステロンと結び付くことにより、AGA(男性型脱毛症)の原因物質となるDHTを生成する働きがある。

先天性の病気等でない限り、どのような男性においても、その頭部には多くの5α還元酵素が存在している。ただし、その分泌量には個人差があり、分泌量の多い者はAGAとなりやすく、分泌量の少ない者はAGAとなりにくい。分泌量が多いか少ないかは、遺伝によって決まると考えられている。

なお、5α還元酵素Ⅱ型は、薄毛という観点からのみ見れば厄介な物質だが、本来は男性器の形成などにおいて重要かつ不可欠な物質である。

5α還元酵素の働きを抑えればAGAは改善する

5α還元酵素とAGAとの関係を明らかにするため、まずはAGAが発症する仕組みを確認する。

【AGAが発症する仕組み】

男性の体内では、主に睾丸から大量のテストステロン(男性ホルモンの一つ)が分泌されている。このテストステロンは、5α還元酵素と結びつくことにより、DHTという物質に変化する。DHTとは、テストステロンの本来の働きを、より強力にした物質である。

5α還元酵素Ⅱ型は、主に前頭部や頭頂部の毛乳頭の中に多く存在することから、必然的にDHTも前頭部と頭頂部の毛乳頭の中に多く作られる。

同じく毛乳頭の中には、男性ホルモン受容体という、男性ホルモンの受け皿のような組織がある。この男性ホルモン受容体とDHTが結合したとき、ヘアサイクルが乱れて「成長期」にある毛髪の本数が減り、やがてAGAに至る。

なお女性の体内でもテストステロンが分泌されているが、その量は、男性のわずか1/10程度である。よって、たとえ女性の体内でDHTが生成されたとしても、男性のAGAのような症状に発展することは、ほとんどない。

【5α還元酵素の働きを抑える薬】

AGAとは、いくつかの原因が複雑に絡み合って発症する症状である。よって、薄毛の原因はDHTだけではない。

ただし、そうとは言え、AGAの原因の大半はDHTである。よってAGAの治療にあたっては、DHTの生産量を抑えることが、臨床的には第一選択となる。

上記の通り、DHTは主に5α還元酵素Ⅱ型の介入によって生まれる。DHTの生産量を減らすには、5α還元酵素Ⅱ型の働きを抑えることが重要となる。

現在、5α還元酵素Ⅱ型の働きを最も強力に抑えるとされる薬効成分は、フィナステリドである。フィナステリドとは、世界で最も著名なAGA治療薬「プロペシア」の主成分である。

なお「プロペシア」の臨床試験によると、これを長期服用した90%以上のAGA患者の頭髪に、何らかの変化が見られた。逆に言えば、薄毛の発症原因の一つに5α還元酵素Ⅱ型が深く関与している、という仮説が立証された。

5α還元酵素「Ⅰ型」が関与するAGAもある

5α還元酵素には、「Ⅱ型」の他にも「Ⅰ型」が存在する。

「Ⅰ型」にも、「Ⅱ型」と同様、テストステロンをDHTに変換する働きがある。しかし「Ⅰ型」が存在する場所は全身の皮脂腺。頭部においては、後頭部と側頭部の皮脂腺に多く存在する。

皮脂腺とヘアサイクルには、直接的な関係はない。よって、いかに皮脂腺に多くのDHTが作られようとも、AGAに発展するリスクは低い。後頭部や側頭部に「Ⅰ型」が多く存在しているとは言え、毛乳頭ではなく皮脂腺に存在している以上、後頭部や側頭部にAGAが発症するリスクは低い。実際、後頭部・側頭部までハゲあがる男性は、ほとんど見られない。

よって、長らくAGAの治療においては、「Ⅱ型」の働きのみを抑えれば良いと考えられていた。ところが昨今、「Ⅰ型」の影響によってもAGAが発症する可能性がある、との見解が一般的となりつつある。

「Ⅱ型」を抑え込むはずのプロペシアを服用しても、まったく症状が改善しない患者がいる。中には、症状が悪化してしまう患者もいる。これら患者に対して、「Ⅱ型」を抑える薬と同時に「Ⅰ型」を抑える薬も服用させると、AGAが改善することがある。これらの現象は、AGAの原因として「Ⅰ型」が関与している患者も一定数存在することを示す。

この流れの中で誕生した内服薬が、「Ⅰ型」「Ⅱ型」の両方の働きを抑える「ザガーロ」である。

海外における臨床試験では、「ザガーロ」の発毛率は、「プロペシア」のそれよりも約30%高かったという。[注1]

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